複雑な財務システムと中央集権パラダイム

  1. 理解困難な財務システムにより、役所上がりの首長が蔓延
  2. 役所上がりの首長たちは、国からの財源獲得ばかりを奢る
  3. 国の優位性が決まり、地方間に競争原理が働かなくなる
  4. その結果、国が主導する時代遅れの地方行政が続く

こうした問題の根源となる理解困難な地方の財務システム(地方交付税交付金制度)を30秒で分かるよう記したので、まず、それをさらりと読んで欲しい。

塩川財務大臣

「母屋でおかゆ、離れですき焼き」
2003年、塩川財務大臣は、政治の影響が及びにくい特別会計で、役人が無駄使いをしていることを、分かりやすく、批判した。

2008年、無駄使いが批判されがちな5つの特別会計(道路・空港・港湾整備、都市開発、治水)は、社会資本整備事業特別会計に統合された。

2009年、社会資本整備事業特別会計は、社会資本整備事業として、一般財源化された。しかし、個別の事業ごとに補助金を渡す『ひも付き補助金』の制度が、中央官僚による地方支配の根源である、と批判された。

民主党政権下の2011-2013年度において、一旦『ひも付き補助金』は廃止され、自治体が自由に使える『一括交付金』が創設されたが、民主党の失脚と同時に廃止された。
同時に、地方創生推進交付金という新たな『ひも付き補助金』が新設された。

『ひも付き補助金』による国のコントロール

社会資本総合交付金による都市再生整備計画事業(旧まちづくり交付金)は、対象事業の自由度が増しているものの、対象事業の内容を国が審査し、事業費の4割を国が補助するものなので、大枠は『ひも付き補助金』と同じだ。

国の用意するメニューを選択するだけの地方自治

こうした複雑な交付金と補助金の制度によって、国は、地方行政の自主性を奪い、国への従属に仕向けてきた。自主性を失った自治体間には、競争原理も働かない。

国の強い影響下にある地方財務に対し、地方議会に口出しをする力はない。地方交付金交付税に代わる財源を創出する案でも出さない限り、民主的決定プロセスを演じるだけの追認機関とならざるを得ないのである。

空洞化する地方議会

空洞化は、はりぼて化と言い換えることができる。「空洞」も「はりぼて」も、外形は立派なのに、中身が空っぽのモノや状態。

議員たちの不正が次々と発覚した富山市議会の腐敗を描いた映画『はりぼて』を見て、すべての地方議会に共通する根本的な問題を考えたい。

地方議会に共通する根本的な問題は、多くの地方議会の『はりぼて』化を疑うべきであることを示している。

北海道・蘭越町のケース

後述する「蘭越ニセコ・スキー場不正譲渡疑惑」において、蘭越町の山内勲副町長は、『間接民主主義という言葉を用いて、議会に話を通しさえすれば町民に説明する必要はない、といった旨の持論を展開した。

山内副町長の主張は、追認機関と化した議会への責任転嫁に聞こえる。

蘭越ニセコ・スキー場不正譲渡疑惑

蘭越町の隠し事

そして、スキー場の譲渡先となった外資系企業は、譲渡から2年と経たず、地権者である北海道に転売の意思を表明した。

情報の秘匿と責任転嫁・取材妨害・はりぼての議会

なお蘭越町は、公募において、選定の基準や経緯はおろか、選定された企業のプロポーザル提案の内容さえ公開しなかった。また蘭越町は、外資系企業との譲渡過程における打合せ記録を何ひとつ残していない。さらに蘭越町は、筆者の汚職疑惑の調査を様々な方法で妨害した。また、蘭越町議会は、汚職疑惑の調査を求めた筆者の陳情を杜撰なやり方で処理した。