「箸の上げ下ろしを規制する」

こう言われるほど、日本は徹底した事前規制型の社会となってしまっている。事前規制を主導するのは、中央省庁の官僚たちである。彼らがひたすら事前規制をしたがるのは、所管する業界における影響力を高めたいたいからだ。

なお、事前規制型の社会には、際限なく行政コストがかかる。そのコストは、税金だけに留まらず、受益者負担と称する料金も徴収される。インフラであるはずの道路で、高い通行料金を取られるのが代表である。 おそらく、負担するコストあたりの行政サービスの質において、日本は最低だろう。なぜなら、事前規制型の行政は、事後チェック型に対し、圧倒的に効率が悪いからだ。

行政コストの負担が大きいだけでない。許認可によって競争が抑制された業界において、消費者は高い料金を負担させられる。その筆頭は、NTTの光インターネット利用料だろう。

市場のコントロール vs お役所のコントロール

本来の自由経済社会においては、主として市場原理が、企業と消費者のバランスを保つ機能を持つ。良い商品は評価され、悪い商品は市場から見放される、という仕組みだ。しかし、ニッポンにおいては、さまざまな許認可や規制が市場をコントロールしている。

市場のコントロール
お役所のコントロール

こうしたお役所のコントールは、古い大企業を守る方向に働いている。そして、お役所に守られた業界の企業は、競争不要のぬるま湯状態にどっぷりとつかっている。

司法のコントロール vs お役所のコントロール

本来、市場経済主義の法治国家においては、まず市場原理によって、消費者をないがしろにする企業を排除されることが期待されている。良い商品は評価され、悪い商品は市場から見放される、という仕組みだ。そして、企業の法令違反には司法が関与する。

法治国家の基本
お役所のコントロール

しかし、ニッポンでは、企業の法令違反に対しても、司法はあまり動かない。そして、行政が行政指導や業務停止で介入し、幕引きを図ろうとする。

業界団体とお役所の利益

ニッポンの現実

このようにお役所が、企業にかかわり合おうとするのは、各種業界団体(公益法人等)をつくり、そこで甘い汁を吸うためである。

こうして設立される社団法人○×協会や、財団法人◎◎協会といった業界団体には、お役所から天下りするための指定席が用意されている。

また、民間の大企業が市場を寡占する状態は、天下るお役人にとって好ましいことである。

こうしたシステムによる行き過ぎた規制が、健全な競争を阻み、社会の自由な活力を失わせている。それに、十分な競争が行われないことによって、不利益を被るのは消費者である。

事後チェック型の諸外国

事後チェック型の国では、自由な競争が促される。問題の多い商品や企業は、消費者に見放され、淘汰される。これが市場原理である。市場原理のメカニズムを正常に機能させることが、もっともコストを掛けずに安全を実現する手段である。 

企業に不法行為があったなら、司法は行政のアクションを待たずに介入する。

官栄えて、民滅ぶ

脱亜入欧(アジアを脱し、欧州に入ろう!)がスローガンだった明治時代から、およそ100年が経過した。日本は、すっかりアジアを脱してしまったが、欧州各国に並ぶことはできなかった。また、一時だけ経済大国と呼ばれたが、生活大国にはなれなかった。

明治時代の近代化が官主導であったことは、まぎれもない事実である。しかし、当時の官僚たちは、日本が他国に遅れていることを自覚していた。

現代の官僚たちは、問題を自覚するどころか、構造的な問題を覆い隠し続けてきた。その一方で、日本経済の潜在力をアピールして続けている。

しかしながら、人一倍の努力家であった日本人は、うんざりするほどの役人天国を見せつけられることによって、もはや努力する意気を失ってしまったのだろう。