国家賠償請求に至る経緯と第一審の推移

最終更新日:2024年5月23日

町営スキー場譲渡にかかる汚職疑惑と汚職調査の妨害

ニセコのリゾートバブルは、山林を「金のなる山」に変えた。それは地域振興の鍵でもあった。それに気付かぬ蘭越町長らは、星野リゾートの提案を足蹴にした。スキー場の売却においては、上場企業を排除し、8割の値引きと不透明な入札を経て、外資系企業に「土地転がし」への抜け道だらけの契約書で譲渡した。

そして、スキー場の譲渡先となった外資系企業は、譲渡から2年と経たず、地権者である北海道に転売の意思を表明した。

情報の秘匿・取材の妨害・杜撰な議会

なお蘭越町は、公募において、選定の基準や経緯はおろか、選定された企業のプロポーザル内容さえ公開しなかった。また蘭越町は、外資系企業との譲渡過程における打合せ記録を何ひとつ残していない。さらに蘭越町は、筆者の不正調査を様々な方法で妨害した。蘭越町議会はというと、背任疑惑の調査を求めた筆者の陳情を杜撰なやり方で処理した。

告発と国家賠償請求

そこで筆者は、関係する蘭越町職員と議会議員らを刑事告発した。併せて、取材妨害に対して国家賠償を提訴した。

いずれ刑事告発関係の文書も公開するが、現段階における公開は適切ではないので、まずは国家賠償請求の関連文書のみ公開する。

札幌地裁小樽支部令和5年(わ)第28号 汚職調査の妨害に対する国家賠償請求事件

原告 野村一也(蘭越町町民)

被告 蘭越町、難波修二(蘭越町議会議員)

申し立て文書の抜粋

請求の趣旨(訴状補正書より)

  1. 被告蘭越町は、原告に対し、金100万円を支払え
    被告難波修二は、原告に対し、金100万円を支払え
  2. 訴訟費用は、被告らの負担とする
    との判決、ならびに、仮執行の宣言を求める。

責任原因(訴状補正書より)

  1. 原告は、被蘭越町と難波修二に対し以下示す理由をもって提訴した。
    (1) 被告蘭越町 に対しては、 訴状第5の 2より第5のに示した蘭越町職員ら不法行為について、国家賠償1条項基づ損害を求める ものである。
    (2) 被告難波修二に対しては、訴状第5の6 の(1) から (5)に示 した 難波修二の関わる行為は、蘭越町議会員として原告が提出した陳情を誠実に処理なければならない( 請願法5条)にもかわらず、それを怠っていることを不法行為として、 民法709条に基づいて損害賠償を求める ものである 。

第6 損害(訴状より)

  1. 原告の 汚職調査 は、公益を目的とし、無報酬で行ったものある。
  2. 原告に対する被告らの行為により、 原は汚職調査をまとめる 時間の利益を失った のみならず、 本来の汚職調査対象以外の事務を 余儀なくされた 。
  3. 汚職調査の開始から本賠償請求をするまで4年以上期間において、原告が失 った時間は以下のとおり。
    (1) 資料収集:およそ100時間
    (2) 電話および訪問取材:およそ100時間
    (3) 証拠を取りまとめる作業:およそ600時間
    (4) 合計:およそ800時間
  4. 被告らが、理由なく原告 の請求を拒絶し、よってたかって繰り返し侮 辱、または原告の名誉を棄損する行為をったことにより、原告は 甚大な時間的・精神損害を受けた。その慰謝するための費用は200万円が相当である。

裁判体(年齢は2023年9月時点)

裁判官:大倉靖広(裁判長・59期生44歳)、池上恒太(70期生32歳)、斎藤由里阿(74期生)

裁判経過

第1回目(2023年6月21日)以下、第1回口頭弁論調書より抜粋した

原告

  1. 訴状(PDF版HTML版(補正・認否組み込み済))、「蘭越町町長」とあるのを「同代表者町長」と訂正の上、訴状補正書(2023年5月8日付け)、準備書面1(同月8日付け)、訴状補正書2(同月31日付け)各陳述
  2. 上記訴状補正書(同月8日付け)は、被告を蘭越町及び難波修二個人と補正する趣旨である。
  3. 上記準備書面1の冒頭に「訴状第5の2について、補足する」とあるのは、訴状第5の2以下について補足するとの趣旨であり、訴状第4記載の具体的事実との関連性を明示するなどして補足する趣旨である。
  4. 被告難波修二(以下「被告難波」と表記する。)に対する請求は、被告難波個人の責任を追及するものであり、準備書面1の第5の6項記載の事実を権利侵害行為とする個人による不法行為であるという趣旨である。
  5. 損害に関しては、訴状記載の慰謝料200万円について、被告蘭越町及び同難波それぞれにつき100万円ずつの賠償責任があるという趣旨である。

被告

答弁書陳述擬制(欠席者が答弁書を弁論したとみなす意)

第2回目(2023年8月2日)以下、第2回口頭弁論調書より抜粋した

被告ら 

準備書面1(令和5年7月31日付け)陳述

原告

令和5年9月4日までに

  1. 準備書面1第5の2記載の山内勲の行為及び同4の今野満の行為については、違法行為を具体的に特定した書面を提出する。
  2. 同3記載の工藤信也の行為及び同5記載の坂野孝洋の行為については、被告らの準備書面1に対する反論を提出する。

事務手続き

原告は、期日変更申出書(2023年8月4日付け)を裁判体に提出した。
裁判体は、原告の期日変更申出を却下した。なお、文書による請求に対する裁判(裁判官のする判断はすべて「裁判」とされる)結果は、文書とされないのが慣例のようだ。

3回目(2023年9月13日)以下、第3回口頭弁論調書より抜粋した

原告

原告が違法行為と主張している事実について、その特定や、違法行為となる理由を主張するには、本件の膨大な背景事情も踏まえなければならず、主張書面提出には、なお2か月を要する。

令和5年11月13日までに、前回期日で同年9月4日までに提出するとしていた次の事項を明らかにした書面を提出する。

  1. 山内勲の行為のうち、
    (1)「黒幕」という発言に関するものにつき、①当該発言があった日時の特定、②甲第143号証の3と甲第177号証の12の関係、③これらの発言が名誉既存となる理由
    (2)税金滞納に関する暴露・非難行為に関するものにつき、①当該行為があった日時の特定、②これらの言動を誰が聞いていたか
  2. 今野満の行為につき、侮辱行為及び改ざん行為とはどの行為を指すのかの特
    定並びに違法行為となる理由
  3. 工藤信也の行為につき、理由なく拒絶した事実はないとの主張に対する反論
  4. 坂野孝洋の行為につき、名誉棄損となる理由

第4回目(2023年12月6日)以下、第4回口頭弁論調書より抜粋した

原告

  1. 準備書面2 (令和5年8月2日付け)、準備書面3 (同年11月13日付け)、第1の1項及び7項を除き訴状補正書4 (同年11月13日付け)及び訴状補正書5 (同年12月6日付け)各陳述
  2. 上記準備書面2は、被告難波に対して陳情の取扱いが不当であることを主張するものである。
  3. 上記準備書面3は、被告蘭越町に対してホームページ外注に係る情報公開請求の中でなされた一連の対応について不法行為であることを主張するものである。
  4. 「黒幕」という発言については、原告が撤回したのにもかかわらず、繰り返し発言を引っ張り出されたことが、原告に対して不快感を与え、感情を害されたものである。
  5. 主張立証にはなお時間を要する。

被告ら

上記各準備書面によっても、不法行為の特定はされておらず、不法行為の成立を争う。

証拠関係別紙のとおり

裁判長

弁論終結

第4回目の弁論の状況については、蘭越町議会において、金町長が詳細を報告しているので、その個所を次に抜粋する。

12月6日の第4回口頭弁論で、原告は本人野村一也氏が出頭し、被告は蘭越町と難波修二氏の代理人となる佐々木総合法律事務所の弁護士2名が出頭しております。
冒頭、原告野村一也氏からの準備書面・訴状補正書の提出が確認され、これらについての陳述がされました。
裁判所から原告に対して、準備書面をもってしても原告が主張する請求原因が特定されていないことが指摘をされました。
原告野村一也氏からは、書面内容を説明するとともに、さらに補充したいことが述べられましたが、裁判所からは、原告の要望を受けて2か月の準備期間を追加で与え、11月13日を期限として厳守するよう指示した経過であり、追加の主張準備期間は認められないことが述べられました。
被告の代理人弁護士からは、原告の主張は争うものとし、8月2日の時点で、次回までに主張を特定できなければ終結すべきことを述べており、また、9月13日の期日でも、最終期限として2か月の準備期間が付与されたものの、主張が特定されなかった経過であるので、審理を終結することはやむを得ないことを述べております。
原告野村一也氏からは、審理を終結することに抗議がありましたが、裁判所からは判決を行うに審理は熟していることが述べられ、12月6日をもって終結となり、判決の言い渡し期日を、令和6年1月24日に指定をされました。

令和6年蘭越町議会第1回臨時会会議録

第5回目(2024年1月24日)

原告不在のなか、判決が読み上げられた。

控訴

原告は、2月6日に控訴状を、4月30日に控訴理由書(PDF版HTML版)を提出した。

控訴審は、事件番号を令和6年(ネ)第64号とし、札幌高等裁判所802号法廷において、5月28日午後1時半より開廷される。