令和6年(ネオ)第45号上告提起事件
控訴審・札幌高等裁判所 令和6年(ネ)代64号
原審・札幌地方裁判所小樽支部 令和5年(ワ)第28号
上告理由書
最高裁判所御中
2024(H6)年10月21日
上告人 野村 一也
上告人 野村 一也
被上告人 蘭越町 外1名
上告理由
控訴審は、上告人(控訴審控訴人)の弁論機会を不当に制約し、事実と異なる箇所を含む被上告人(控訴審非控訴人)らの答弁で採決を行っており、日本国憲法第31条に内包される「適性手続きの保障」に違反している。
第1 控訴審のプロセス
- 2024年4月30日付け控訴理由書を、上告人は提出した。
- 2024年5月16日付けの答弁書を、被上告人弁護士は提出した。
- 2024年5月24日頃、上告人は答弁書を受け取った。
- 2024年5月28日、第1回口頭弁論が実施された。
- 2024年6月**日、上告人は、第1回口頭弁論調書(甲240)を受け取った。
- 2024年6月12日、上告人は、札幌高裁第3民事部1係を訪問し、第1回口頭弁論の進行方法に抗議した。書記官入原は、上告人に対し、弁論の進行に対して異議申し立てが可能である旨を伝えた。≪甲230‐1(音全て)、‐2(音抜粋)、‐3(反訳)≫
- 2024年7月29日、上告人は、札幌高裁第3民事部1係に「控訴の進行に対する異議申立書(甲237)」を提出した。
- 2024年7月30日、上告人は、法廷での判決言渡しに出廷できなかった。
- 同年同月同日、上告人は、札幌高裁第3民事部1係に「口頭弁論調書の記載に対する意義申立書(甲237-1)」、証拠説明書(甲237-2)、甲228-1から甲240までの甲号証を提出した。
第2 公訴人に対する適正な手続き保障の欠如
- 2024年5月28日の第1回口頭弁論における、適正な手続きの欠如。≪甲230-1(音声全て)、-2(音声抜粋)、-3(反訳)≫
- 齋藤清文裁判長(以下「裁判長」という)は、第1回目口頭弁論が始まって2分30秒後に、審理を終結して判決をすることを宣言し、それに対する同意を訴訟当事者双方に求めた。
- 上告人が被上告人の答弁書には事実と異なる箇所があることを口述し、弁論の継続を求めたにもかかわらず、裁判長は、「今日までに出さないと。今日の期日までに出さないと(不明)・・・他の事件でもそうですよ。」と言い放ち、上告人による弁論の継続手続きの求めを拒絶した。その結果、上告人は、被上告人の答弁書に反論する機会を失った。
- 上告人は、被上告人答弁書に書かれた内容が事実と異なっていると指摘した。
- 答弁書第2(本案前の主張)には、「なお、原審においても上告人(一審原告)が自ら設定した提出期限を遵守せず、期日の空転が生じていた。」との記述がある。
- しかし実際には、2回目の弁論のときに、被上告人の弁護士が、次回(3回目弁論)で終わらせる旨を主張し、それを裁判官が採用したという経緯があることを口述した。≪甲230-3(反訳3~4ページ)≫
- また、答弁書において、上告人の人格や行動を否定的に形容する語句、ニュアンスが事実と異なることを口述した。≪甲228-1(法廷での音声記録抜粋の反訳)、-2(反訳)≫
以下、甲228‐2(反訳)より抜粋する。 [上告人野村]はい。第3の2の部分。段落で、三つ目の段落で・・・ごめんなさい。第3の3ですね。第3です。第3の3の、段落でいうと、「しかし」のところですね。
しかし、一審原告は書面提出がなかったことを問いただした裁判所に対して、猛烈に抗議する状態であった。(本訴訟と無関係の自身の活動の話を含め10分程度、一審原告(上告人)が裁判所に抗議等を続ける有様であった。)。
「無関係の自身の活動の話」「猛烈な行為」「有り様」という言葉には、明らかに私の人格や行動を否定的に形容する語句、ニュアンスが含まれているように、僕には見えるんですけど、このときに私が10分間で抗議した内容は、自分の利益よりも、社会秩序の問題に対しての骨子だったはずなんです。
具体的には、裁判所が今回私のケースと同じように、立証が困難なケース、記録がないケース、音声記録はたまたま録ってましたけど、それがなかった場合、いじめなどにあるように、陰でやられること、見えない場所で行われること、こういったものを、立証の困難さを裁判所が軽視するなら、いじめ、そういった言葉の暴力といった社会の問題に対して、法の抑止効果が及ばないと、被害者が自殺に追い込まれるようなケースもなくならないと、そういう主張を私はしたんじゃないですか?これちょっと先生方にお尋ねしたいんですけど。(抜粋、終わり)
なお、当該の原審における第3回目弁論において、公訴人は、その法廷の音声を録音した。≪甲229‐1(法廷の音声記録)、‐2(音声抜粋)、‐3(反訳)≫
[原告野村]
以下、甲229‐3(反訳)より抜粋する。これ訴状のどっかにも入れたと思うんですけども、そもそも、私が問題としてたのは、蘭越町のスキー場の売買に至る内容にすごく問題が感じられて、それを調査したというところでございます。この行為は、私の利益には何もならなくて、ほとんどボランティアで、100時間を超える時間をかけて、私としては無報酬で、公園の掃除を1年間続ける人以上の手間をかけて、ボランティアでやってる。ただ、それについては、刑事事件なんで、当然、警察が動かなければ、どうにもならない。私ではどうにもならない。刑事事件としての告訴状は、何とか出すことができたんですけども、それを捜査するかどうかは警察次第で、僕の知る限り、警察は経済事件に対しては、なかなかやろうとしない。やろうとしないんだったら、しようがないから、私ができることとして、その中で発生した民事事件になり得るところ、実際、それスポットで見てもですね、十分、私は損害を受けていると思ってまして、それを国賠として並行して出したものでございます。
その中で刑事に係る部分は、当然、私の個人的な損害にはなり得ないんで。その過程で出た今回の名誉毀損、侮辱行為、そういったものを出さざるを得ないんですけども、こういった行為というのはですね、旭川のいじめ事件に代表される通り、いじめられる側、いじめる側というのがあって、いじめられる側が、これを明らかにしようとするのは膨大な時間がかかる。それは、刑事が動いてくれれば、まだいいけれども、刑事って、なかなか動かないんで、そうすると、もう刑事が動かないから、仕方なく、民事でやらざるを得ない。
民事でやるにはですね、その侮蔑発言を一個一個拾い出してまとめる作業ってのは、ものすごく時間がかかって・・・ちょっと私、被害者意識があるんですよね。被害者としては、とても苦痛な作業なんです。それを、一応、私は訴状では、できる限りのものをまとめてお出しした。前回の期日において。確かに、私も安易に「1ヶ月できる」と申し上げたかもしれませんけれども、速やかに私は、「それはやっぱり間に合わない」という意思表示をした。でも、それに対して、断られてしまった。
僕は、裁判というのは、唯一の民事的なトラブルを解決するための公的な裁判・・・機会だと思ってまして、それ別に弁護士費用を払える人だけのものじゃなくて、行政書士がいなくても行政手続きができたり、税理士にお金払わなくても税申告ができるように、弁護士お金払わなくても司法サービスが受けられるべきだと思ってて、それで僕はこの場に臨んでおります。ただ私は何も分かんないわけじゃなくて、それなりの作法をこれは文章にしろ、立ち居振る舞いにしろ、勉強してますし、ちゃんと粗相がないようにやってるつもりなんです。であるにもかかわらず、立証責任は私にしかない。これを拒絶するのは簡単。「そういう事実はない」と、「認めない」とだけ言ってれば、簡単な話でね。つまり、立証する側に多大な手間が掛かるにも関わらず、それを説明しているのに、安易に1ヶ月を「ダメ」と答えることに対して、僕はすごく不満を持ってる。1ヶ月を。逆に、僕はなぜ、それを認めてくれなかったのかの説明を求めたい。
僕に対して「1ヶ月でできるか?」「できるのか?」と詰める前に、なぜ僕が、説明して、書記官にも説明しているにも関わらず、それを、断ったのか僕はすごく不信感を持ってるのは、「1ヶ月で約束通りに出せなかった場合においては、裁判官の判断で、この場で終わるかもしれない」みたいなことを、言われた。それは困ると、だから、一生懸命やろうとしてるけども。それに対して、なぜダメなのか、説明が全くなくて、そういう冷たい反応を裁判所がしてしまうんであれば、こういった立証が困難なイジメとか、名誉毀損だとか、そういったものは、いつまでたってもね、民事的な解決が不可能になるんです。だから、僕はあなたがなぜ、前回、それを、認めなかったのか、説明を求めます。(抜粋、終わり)
- 上掲4の各号に示すとおり、控訴審において、上告人は、第1回目弁論の4~5日前に答弁書を受け取り、弁論において、答弁書に対する反論を一部口述し、次の弁論機会を求めた。しかし、裁判長はそれを認めず、同日に審理を終結させた。
開廷から2分30秒後の審理の終結の発問、および、それに対する上告人の異議を裁判長が一蹴したことによって、公訴人は『門前払い』の印象を受けた。
さらに、公訴人が原審で口述した内容は弁論調書に記録されず、事実と異なる内容が記された被上告人の答弁書だけが訴訟記録として残った。 - 控訴審の裁判体が為した裁判は、「適性手続きの保障」に違反している。
- 裁判体は、上告人に対し、1回の口頭弁論で終了させることを事前に知らせることなく、弁論を終結させた。
- 裁判体は、上告人が、被上告人らの答弁に事実と異なる点を口述および文書(甲237)で指摘したが、弁論調書にも判決にも記録しなかった。
- 裁判体は、事実と異なる箇所を含む被上告人(控訴審非控訴人)らの答弁で採決を行った。
第3 スカスカの口頭弁論調書
控訴審第1回口頭弁論調書の弁論の要領等に記された箇所を全部抜粋する。≪甲240≫
弁論の要領等
控訴人
控訴状陳述
被控訴人ら
答弁書陳述
当事者双方
原判決記載のとおり原審口頭弁論の結果陳述
控訴人
控訴理由書陳述
証拠関係別紙のとおり
第4 法廷の録音に対するディスクレーマー
- 法廷の録音に至る経緯
上告人は、日本のすべての裁判所と裁判官が法廷内での録音を認めないことを知っている。その一方、透明性確保を目的として、法廷のテレビ中継さえ許す国があることを知っている。
本国家賠償請求訴訟を担当した裁判体は、上告人の不案内を差し引いても、本人訴訟を行う上告人に対する冷淡さは顕著であった。
そして、上告人は、裁判所が録音を認めないことと合わせて、弁論調書の内容量が極端に少ないことによって、裁判所の審理に対して異議を行う証拠が存在し得ないことに疑問を感じた。それは、裁判当事者のみならず、裁判の公正さを民主的に評価しようとする傍聴人にとっても同じである。
なお、法廷が公開されていることが、その不安を相殺するものではない、と上告人は考える。
- 次に、上告人が法廷での口頭弁論を録音した背景を示す。
- 横浜地裁
平成26年(わ)第203号、上告人を被告とする道路交通法違反被告事件において、請求人は、書記官菊池麻美子が作成した承認尋問調書で法廷での発言内容と調書での発言内容に差異を感じ、書記官を問い詰めた。それに対し、(書記官は)録音して書き起こしたから調書は正しい、と反論された経験がある。 - 同裁判の控訴審において、被告としての上告人の国選弁護人は、開廷中にポケット内の録音機を誤って再生してしまったことがあった。国選弁護人は、それに気づかず、法廷内でしばらく音声が再生され続けたが、東京高裁第8刑事部の裁判官大島隆明は、それに注意さえしなかった。
- これらの経験によって、上訴人は、関係者は、録音しても、表面的に録音をしないふりをしていれば許されていることを実感した。そして、善良な傍聴者だけが、前時代的で、証拠にならない手書きメモを強いられていることに不合理を感じた。以後、上告人は、裁判所が作成する調書の正確性の瑕疵を指摘できるよう、進行を信頼できないと上告人が感じた裁判体に対しては、法廷での録音をするようになった
- デュー・プロセスの必要性
- 「公開の裁判を行った」という表面的な事実だけで、憲法31条の精神が求める「適性手続き」を行ったことにはならないことは明白である。
- 法廷の録音録画の禁止と、極めて内容の乏しい弁論調書のふたつによって、裁判が「適性手続き」を経たか否かを、民主的に評価することは、事実上、不可能となる。
- 本件に限らず、裁判の「適性手続き」を民主的に評価できない現実が「適正手続きの保障」に対する裁判官の意識を希薄にしている、と上告人は、指摘せざるを得ない。
以上