事件番号 令和7(2025)年(行ウ)第5号
原告 野村 一也
被告 蘭越町
準備書面1
2025(R7)年10月14日
札幌地方裁判所御中
原告 野村一也
第1 提出の趣旨
本書面は、被告答弁書「第2 本案前の主張」に対し、訴状および回答書(訴状訂正申立書)を踏まえて各号ごとに反論するものである。
第2 被告答弁書第2の主張(要旨整理)
1 補正通知は処分性を欠き、抗告訴訟や確認訴訟の対象とならない。確認の利益もない。
2 住民監査請求の却下処分自体の違法確認は法制度上予定されず、確認の利益もない。
3 以上を前提に、他の請求(無効確認・取消等)も不適法である。
4 差止・契約請求は原告の自己の権利主張に基づかない。
第3 反論の基本枠組み
1 補正通知と条件付き却下予告は原告に実質的不利益を与え、処分性を帯び得る。
2 補正通知の違法性・却下処分の違法性を確認する訴えには具体的な確認利益がある。
3 住民監査請求・住民訴訟制度の趣旨に照らし、形式的却下ではなく実体審理が要請される。
4 回答書(訴状訂正申立書)第1各項および甲57(文献)・甲147(最高裁判例)により具体性・適法性を補強する。
第4 各号に対する反論
1 補正通知違法確認(請求の趣旨第1)に対する反論
(1) 処分性について:補正がなければ却下する旨の付記は、請求人の権利行使を制約する実質的効果を伴う。
形式名目にかかわらず、原告に不利益を課す性質を有する以上、処分性を肯定できる。
(2) 確認訴訟の適格・確認利益:補正通知の違法性確認により、後続手続における主張基盤・紛争の蒸し返し防止・手続の適正化という具体的利益がある。
回答書で摘示した補正要求の根拠欠如・過剰性は、確認利益の存在を前提とする主張である。
(3) 制度趣旨に基づく補正要求の違法性:
甲57号証(3頁以下)によれば、「住民監査請求は、請求人が入手し得る範囲で事実を提示すれば足り、監査委員は職権調査により真実を確認する制度である」とされている。
これに照らすと、監査委員が「具体的・客観的な証拠」を請求人に追加提出させようとする補正要求は、制度の根幹を逸脱するものである。
(4) 補強証拠:甲147号証(最判平成16年11月25日)も、「監査委員が対象行為を認識できる程度に摘示されていれば足りる」と判示している。
原告は既に1989年以降の公文書を整理・提出しており、この基準を充たしている以上、補正要求は不要であり違法である。
2 却下処分違法確認(請求の趣旨第2)に対する反論
(1) (制度整合性:住民訴訟制度の存在は、違法な却下処分の違法確認を一律に排除する根拠とならない。
甲147号証の判示は、住民監査請求の特定要件を緩やかに認めるものであり、補正通知の違法性を前提とした却下処分の違法確認を認める理論的基礎を提供する。
(2) 確認利益:違法確認により、将来の手続運用の適正化、原告の権利救済の実効性確保、重複紛争の防止といった利益が具体的に認められる。
(3) 選択不適格論への反論:補正通知違法確認との一体関係にあり、却下処分の適法性は本件紛争解決の中心問題である。
3 その他の各請求(第3・第5)につい
4 て
抗告訴訟類型に該当しないとの一律主張は失当である。
無効等確認・取消の各構成は、補正通知・却下処分の具体的瑕疵を前提に、適法に主張し得る。
5 第6(差止・契約請求)について
原告は住民監査請求・住民訴訟制度に基づく法的利益を有する。
将来の不当な契約締結を防止する差止の必要性・相当性は、当該事案の経緯および提出資料から基礎付けられる。
第5 結語
被告の欠缺論(けんけつろん)は、補正通知・却下処分の実質的効果と制度趣旨を看過するものである。
甲57号証および甲147号証に示される制度的・判例的根拠に照らせば、原告の主張には十分な法的基盤がある。
よって、答弁書第2各項の主張は排斥され、本案において実体判断がなされるべきである。
以上